介護研修資料Part2 誤嚥性肺炎の予防

介護

安全なケアで防ごう!誤嚥性肺炎予防のポイント

  1. 1. 誤嚥性肺炎とは?
    1. ◯ 誤嚥性肺炎の基本知識
      1. • 誤嚥性肺炎とは何か
      2. • 主な症状
      3. • 高齢者に多い理由
    2. ◯ 誤嚥のメカニズム
      1. • 嚥下反射の低下
      2. • 気道の防御機能の衰え
      3. • 静かに進行する誤嚥
  2. 2. 誤嚥性肺炎の原因とリスク要因
    1. ◯ 誤嚥を引き起こす要因
      1. • 嚥下機能の低下
      2. • 口腔内の細菌
      3. • 姿勢の問題
    2. ◯ リスクが高い人の特徴
      1. • 高齢者や認知症患者
      2. • 寝たきりや体力低下
      3. • 脳卒中や神経疾患の方
  3. 3. 誤嚥性肺炎の予防方法
    1. ◯ 日常ケアでできる予防策
      1. • 正しい姿勢で食事
      2. • 食事内容の工夫
      3. • 口腔ケアの徹底
    2. ◯ 嚥下機能を維持するトレーニング
      1. • 嚥下体操
      2. • 発声練習
      3. • 咳の訓練
  4. 4. 早期発見と対応のポイント
    1. ◯ 誤嚥のサインを見逃さない
      1. • 食事中の変化
      2. • 普段の様子の変化
      3. • 夜間の異変
    2. ◯ 異変を感じたらどうする?
      1. • 速やかな報告と対応
      2. • 適切な検査
      3. • 治療とケアプランの見直し
  5. 5. 施設内での多職種連携
    1. ◯ 職員間の協力体制
      1. • 定期的な情報共有
      2. • ケアプランの共同作成
    2. ◯ 専門職との連携
      1. • 言語聴覚士(ST)による評価
      2. • 栄養士による食事調整
      3. • リハビリスタッフとの協働
  6. 6. まとめ:誤嚥性肺炎を防ぐために
    1. ◯ 日常ケアの徹底
      1. • 正しい姿勢と適切な食事形態
      2. • 口腔ケアの重要性
    2. ◯ 異変を早期に発見し、迅速に対応
      1. • 日常の観察と気づき
      2. • 適切な検査と対応
    3. ◯ 多職種連携で質の高いケアを提供
      1. • チーム全体で予防意識を統一
      2. • 安心・安全な環境づくり
  7. 総まとめ
  8. おわりに

1. 誤嚥性肺炎とは?

◯ 誤嚥性肺炎の基本知識

• 誤嚥性肺炎とは何か

誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液、胃液が誤って気道に入り、細菌が肺に到達して炎症を引き起こす病気です。通常、食べ物や唾液は飲み込む際に気道を避け、食道を通って胃に送られますが、嚥下機能が低下すると気道に入ってしまいます。高齢者や嚥下機能が衰えた人は、特に誤嚥しやすくなります。誤嚥した物に含まれる細菌が肺に感染し、発熱や咳、呼吸困難を引き起こします。免疫力が低下した高齢者に多く、気づかずに進行する「不顕性誤嚥」が原因になることもあります。早期発見と日常的な予防が重要です。

• 主な症状

誤嚥性肺炎の症状には、発熱、咳、痰、呼吸困難、倦怠感があります。特に食事中や食後にむせる、咳き込む、声がかすれるといった症状が見られたら注意が必要です。高齢者の場合、これらの症状がはっきり現れず、食欲低下や元気がない、微熱が続くといった形で現れることがあります。夜間の咳や、寝ている間に息苦しそうにしている場合も誤嚥のサインです。また、唾液や痰が黄色く濁っている場合、細菌感染が進行している可能性があります。日常の観察を徹底し、小さな変化を見逃さないことが大切です。

• 高齢者に多い理由

高齢者に誤嚥性肺炎が多いのは、嚥下機能や免疫力が低下しやすいためです。加齢によって、飲み込む力を司る筋肉が衰え、飲食物や唾液が正しく食道に送られず、気道に入りやすくなります。また、認知症や脳卒中、パーキンソン病などの神経疾患があると、嚥下反射が鈍くなり、誤嚥が起こりやすくなります。免疫力が低下すると、気道に入った細菌を排除する力が弱く、感染しやすくなります。寝たきりや長時間同じ姿勢でいる人も、誤嚥しやすい状態です。予防ケアで嚥下機能を維持することが重要です。

◯ 誤嚥のメカニズム

• 嚥下反射の低下

嚥下反射は、食べ物や唾液が喉を通る際に気道を閉じ、異物が気管に入らないようにする防御反射です。しかし、高齢者や神経疾患のある方は、この嚥下反射が低下しやすくなります。嚥下反射が低下すると、食べ物や飲み物が気道に入り込みやすくなり、細菌が肺に到達して炎症を引き起こします。例えば、食事中に飲み込むタイミングが遅れたり、喉に食べ物が残ったままになったりする場合、誤嚥のリスクが高まります。嚥下体操やリハビリで嚥下反射を維持し、誤嚥を防ぐ工夫が必要です。

• 気道の防御機能の衰え

気道の防御機能には、咳反射や気管の粘膜が異物を排除する役割がありますが、高齢になるとこれらの機能も衰えます。例えば、咳反射が弱まると、気道に異物が入っても咳で押し戻すことが難しくなります。特に、長期間寝たきりの方や、筋力が低下した方は気道の動きが鈍く、誤嚥した細菌を排出できずに肺炎が進行しやすいです。定期的な嚥下体操や咳のトレーニング、体位変換で気道の防御機能を維持することが重要です。

• 静かに進行する誤嚥

誤嚥には、むせるなどの症状が出ない「不顕性誤嚥」があります。不顕性誤嚥は、気づかないうちに唾液や胃液が少しずつ気道に流れ込み、細菌が肺に蓄積することで誤嚥性肺炎を引き起こします。特に夜間に寝ている間や、リラックスしているときに起こりやすく、高齢者や神経疾患の方に多く見られます。不顕性誤嚥を防ぐためには、就寝時に上半身を少し起こして寝る、食後すぐに横にならないようにするなど、日常生活の工夫が必要です。

2. 誤嚥性肺炎の原因とリスク要因

◯ 誤嚥を引き起こす要因

• 嚥下機能の低下

嚥下機能とは、飲食物や唾液を安全に飲み込む力です。加齢や病気によって嚥下機能が低下すると、飲み込むタイミングがずれたり、飲食物が正しいルートを通らなくなります。脳卒中やパーキンソン病、認知症がある場合、神経の働きが鈍くなり、さらに嚥下機能が低下します。嚥下機能が弱いと、食事中にむせやすくなり、唾液や食べ物が気管に入り込む「誤嚥」が起こります。嚥下機能低下を予防・改善するには、嚥下体操やリハビリ、食事中の姿勢の工夫が必要です。毎日のケアで嚥下機能を維持し、誤嚥リスクを減らしましょう。

• 口腔内の細菌

口腔内が不衛生だと、細菌が繁殖し、その細菌が唾液や食べ物と一緒に気道に入り込みます。高齢者は唾液の分泌が減り、口の中が乾燥しやすいため、細菌が増えやすい状態です。特に歯周病や虫歯があると、細菌が大量に発生し、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。口腔ケアが不十分だと、口腔内の細菌が舌や頬に付着し、そのまま気道に流れ込むことがあります。食後や就寝前に歯磨きやうがいを行い、入れ歯も清潔に保つことが重要です。定期的に歯科検診を受け、口腔内の健康を維持しましょう。

• 姿勢の問題

食事中の姿勢が悪いと、誤嚥のリスクが高まります。例えば、寝たきりの方が寝たまま食事を摂ると、食べ物が重力に逆らって気道に入りやすくなります。背中を丸めて顎を上げた状態で食べると、飲み込みにくくなり、誤嚥しやすくなります。正しい姿勢は、背筋を伸ばし、椅子に座って顎を軽く引いた状態です。ベッド上で食事をする場合は、上体を30度以上起こし、枕やクッションでサポートすると良いです。食事前に嚥下体操を行うと、飲み込む力が向上し、誤嚥を予防できます。

◯ リスクが高い人の特徴

• 高齢者や認知症患者

高齢者は加齢に伴い筋力や神経機能が低下し、飲み込む力や咳反射が弱まります。特に認知症患者は嚥下機能が低下しやすく、食事中の注意力が低下するため、誤嚥が起こりやすいです。また、認知症の進行により、食べ物を飲み込むタイミングが分からなくなったり、飲み込むこと自体を忘れてしまうこともあります。食事中のむせや食べこぼしが増える場合、嚥下機能が低下しているサインです。介護者は、食事中にゆっくりと声を掛けたり、嚥下しやすい食材や形態を工夫して提供することが大切です。

• 寝たきりや体力低下

寝たきりや長時間ベッド上で過ごす方は、誤嚥性肺炎のリスクが高いです。筋力が低下し、上半身を起こす力が弱くなるため、飲み込む際に重力で食べ物が気道に流れ込みやすくなります。また、体力が低下すると、咳をする力も弱まり、誤嚥した異物を外に出せなくなります。予防には、食事の際に上体をしっかり起こす、定期的に体位変換を行うことが重要です。リハビリや嚥下体操で体力や筋力を維持し、可能な範囲で座る時間を増やすことが誤嚥予防につながります。

• 脳卒中や神経疾患の方

脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患がある方は、嚥下機能や運動機能が低下しやすいです。脳卒中による後遺症で、口や喉の筋肉の動きが制限され、食べ物をスムーズに飲み込めないことがあります。また、パーキンソン病では、筋肉のこわばりや動作の遅れが影響し、嚥下反射が鈍くなります。これらの疾患を持つ方には、専門的な嚥下リハビリやトレーニングが効果的です。日常生活では、食事中にしっかりと時間をかけ、焦らずゆっくり食べてもらうことが大切です。

3. 誤嚥性肺炎の予防方法

◯ 日常ケアでできる予防策

• 正しい姿勢で食事

誤嚥を防ぐためには、食事中の姿勢が重要です。基本は、椅子に座り、背筋を伸ばして顎を軽く引いた姿勢です。ベッドで食事をする場合は、上体を30度以上起こし、枕やクッションで背中と首をしっかり支えます。足の裏が床につくように調整し、安定した姿勢を保ちましょう。姿勢が悪いと、食べ物が重力に逆らって気道に入りやすくなります。食事中にむせやすい場合は、一口ごとにしっかりと飲み込み、焦らずゆっくり食べることも大切です。食事後は、すぐに横にならず、30分程度は上体を起こした状態を保つと効果的です。

• 食事内容の工夫

嚥下機能が低下している方には、食べやすい形態の食事が必要です。硬いものやパサパサした食べ物は誤嚥しやすいため、柔らかく調理し、とろみをつける工夫が有効です。例えば、お茶やスープにはトロミ剤を加え、飲み込みやすい状態にします。また、刻み食やペースト食にすると、噛む力が弱い方でも安全に食事ができます。食材は、のどに詰まりにくいゼリーやプリンなどがおすすめです。一度にたくさん口に入れず、小さめの一口を意識し、ゆっくり食べることが誤嚥を防ぐポイントです。

• 口腔ケアの徹底

口腔内の細菌が誤嚥性肺炎の原因となるため、口腔ケアは非常に重要です。食後と就寝前には歯磨きを行い、歯と歯茎、舌の表面もしっかり清掃しましょう。入れ歯を使用している場合は、外して洗浄し、口腔内も丁寧に清潔にします。口が乾燥しないよう、保湿ジェルやうがいを取り入れるのも効果的です。口腔ケアを怠ると、細菌が繁殖し、唾液と一緒に気道に流れ込みやすくなります。定期的に歯科医や歯科衛生士の指導を受け、口腔内の健康を保ちましょう。

◯ 嚥下機能を維持するトレーニング

• 嚥下体操

嚥下体操は、飲み込む力を維持・向上させるためのトレーニングです。食事前に行うことで、嚥下機能が活性化し、誤嚥の予防につながります。例えば、「口を大きく開けてゆっくり閉じる」「舌を上下左右に動かす」といった簡単な体操があります。また、「パタカラ体操」と呼ばれる発音練習も効果的です。「パ」「タ」「カ」「ラ」と繰り返し発音することで、口周りの筋肉や舌が鍛えられ、飲み込む力が向上します。毎日数分間行うことで、嚥下機能の維持が期待できます。

• 発声練習

声を出すことで、嚥下機能や気道の防御機能を鍛えることができます。例えば、「あー」「いー」「うー」と口を大きく開けて発声すると、喉の筋肉や声帯が鍛えられます。声帯がしっかり閉じると、食べ物が気管に入りにくくなります。歌を歌うことも効果的で、リズムに合わせて発声することで、自然に呼吸や嚥下のリズムが整います。発声練習は座ったままでもできるため、寝たきりの方や体力が低下している方にも取り入れやすいトレーニングです。

• 咳の訓練

咳の力を強化することで、誤嚥した異物を排出しやすくなります。咳の訓練は、深呼吸をして息を大きく吸い込み、その後「ハッハッハッ」と短く強く咳をする方法です。これにより、気管支が刺激され、咳反射が強化されます。意識的に咳をする練習を繰り返すことで、誤嚥した際に異物を咳で押し出せるようになります。また、上半身を軽く前傾させて咳をすると、さらに効果的です。毎日の訓練で咳の力を維持し、気道の防御機能を高めましょう。

4. 早期発見と対応のポイント

◯ 誤嚥のサインを見逃さない

• 食事中の変化

誤嚥の初期サインは、食事中に現れることが多いです。例えば、食べ物を口に入れた際にむせる、咳き込む、食べこぼしが増える、飲み込むのに時間がかかる、といった症状です。また、食後に声がかすれる、痰が絡むような咳が続く場合も要注意です。特に高齢者は症状が軽いため見逃されがちですが、これらのサインが見られたら、すぐにケアの見直しを検討しましょう。日常的に食事中の様子を観察し、違和感があれば記録することで、誤嚥の早期発見につながります。早期対応が重症化を防ぐカギです。

• 普段の様子の変化

誤嚥は食事中だけでなく、普段の様子にもサインが現れます。例えば、声がかすれたり、話すときに喉がゴロゴロ鳴る場合、唾液や食べ物が気管に入り込んでいる可能性があります。また、食欲が減退したり、倦怠感が続く場合も誤嚥性肺炎の兆候かもしれません。さらに、微熱が続いたり、夜間に咳がひどくなる場合は、静かに進行する「不顕性誤嚥」を疑いましょう。日常生活の中で利用者のわずかな変化に気づき、早めに対処することで誤嚥性肺炎の発症を防ぐことができます。

• 夜間の異変

誤嚥は、夜間や睡眠中にも起こりやすいです。例えば、夜中に突然咳き込む、呼吸が苦しそうになる、寝ている間にゴロゴロとした呼吸音がする場合、唾液や胃液が気道に流れ込んでいる可能性があります。また、朝起きたときに声がかすれている、喉の痛みを訴える場合も要注意です。これらの異変は、「不顕性誤嚥」が起きているサインです。就寝時には上半身を少し起こした状態で寝る、寝る前に口腔ケアを行うなど、夜間の誤嚥を防ぐ工夫が大切です。

◯ 異変を感じたらどうする?

• 速やかな報告と対応

誤嚥のサインや誤嚥性肺炎が疑われる症状を発見したら、すぐに看護師や医師に報告しましょう。報告する際は、「食事中にむせることが増えた」「発熱が続いている」「夜間に咳き込むことがある」など、具体的な症状や状況を伝えることが重要です。報告が遅れると、肺炎が悪化し、重症化するリスクがあります。介護職員同士で情報を共有し、誤嚥のリスクがある利用者には食事の形態や姿勢を見直すなど、迅速に対応しましょう。早めの対応が、利用者の健康を守ります。

• 適切な検査

誤嚥性肺炎が疑われる場合、医療機関での検査が必要です。代表的な検査には、嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)があります。嚥下造影検査では、X線を使って食べ物が正しく飲み込まれているか確認します。嚥下内視鏡検査では、鼻から内視鏡を入れ、飲み込む様子や誤嚥の有無を観察します。これらの検査によって嚥下機能の状態が明らかになり、適切なケアやリハビリの方針が立てられます。早期の検査と診断が、誤嚥性肺炎の予防と治療につながります。

• 治療とケアプランの見直し

誤嚥性肺炎と診断された場合、抗生物質による治療が一般的です。治療後も再発を防ぐため、ケアプランの見直しが必要です。例えば、食事形態を刻み食やペースト食に変更する、トロミ剤を使用する、食事姿勢を改善するなど、嚥下機能に合ったケアを提供します。また、嚥下リハビリや口腔ケアを強化し、飲み込む力を維持・向上させる取り組みが重要です。定期的にケアプランを見直し、チーム全体で誤嚥予防に取り組むことで、再発リスクを減らせます。

5. 施設内での多職種連携

◯ 職員間の協力体制

• 定期的な情報共有

誤嚥性肺炎の予防には、日々のケアに関する職員間の情報共有が不可欠です。食事介助時や口腔ケア時に「むせる回数が増えた」「食事に時間がかかる」「食後に咳が続く」などの異変を記録し、申し送りやミーティングで共有しましょう。特に、夜勤やシフト交代時に情報が途切れることがないよう、詳細な引き継ぎを心掛けます。また、バイタルサインや排便・排尿の状況も合わせて確認し、健康状態の変化を見逃さないことが大切です。職員同士が互いに気づいた点を報告し合い、ケア方針を一致させることで、利用者の健康を守る質の高いケアが実現できます。

• ケアプランの共同作成

利用者一人ひとりに合ったケアプランを作成するためには、多職種の連携が欠かせません。介護職員、看護師、言語聴覚士(ST)、栄養士、リハビリスタッフが連携し、嚥下機能の状態や食事形態、日常のケア方法を話し合いましょう。例えば、食事中にむせる頻度が増えた場合、食事形態の変更や嚥下訓練を取り入れたケアプランが必要です。カンファレンスを定期的に行い、利用者の状態に合わせた柔軟な対応を心掛けます。多職種がそれぞれの専門性を活かし、協力し合うことで、誤嚥性肺炎のリスクを効果的に軽減できます。

◯ 専門職との連携

• 言語聴覚士(ST)による評価

言語聴覚士(ST)は、嚥下機能の評価やリハビリを担当する専門職です。STによる嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)で、食べ物が正しく飲み込めているか、誤嚥が起きていないかを確認します。評価結果をもとに、個々の利用者に適した嚥下訓練や食事形態を提案します。例えば、「とろみをつける」「飲み込むタイミングに合わせた声掛けをする」など、具体的なアドバイスを受けられます。介護職員はSTの指導内容を理解し、日常のケアに反映させることで、誤嚥予防の効果が高まります。

• 栄養士による食事調整

栄養士は、利用者の嚥下機能や健康状態に合わせた食事内容や形態を考案します。例えば、嚥下が難しい方には、刻み食やペースト食、トロミ食を提供することで誤嚥のリスクを減らせます。また、栄養バランスを考えた食事を計画し、低栄養を防ぐことも重要です。食事が楽しくなるよう、見た目や味の工夫も大切です。定期的に栄養士と介護職員が情報交換を行い、利用者にとって最適な食事を提供しましょう。食事の楽しみを維持しながら、安全に食べることが誤嚥予防につながります。

• リハビリスタッフとの協働

リハビリスタッフ(作業療法士や理学療法士)は、嚥下機能を支える筋肉や体幹を維持・向上させるための訓練を行います。例えば、体幹トレーニングや首・口周りの筋肉を鍛える体操を取り入れることで、飲み込む力が向上します。寝たきりの利用者には、ベッド上でできるリハビリや体位変換を行い、誤嚥リスクを軽減します。リハビリ内容を介護職員と共有し、日常生活の中で継続的に取り組むことが重要です。リハビリと日常ケアが一体化することで、より効果的な誤嚥予防が実現します。

6. まとめ:誤嚥性肺炎を防ぐために

◯ 日常ケアの徹底

• 正しい姿勢と適切な食事形態

誤嚥性肺炎の予防には、日常的なケアの積み重ねが重要です。食事の際には、椅子に座り背筋を伸ばし、顎を軽く引いた正しい姿勢を保ちましょう。ベッド上の場合は、上体を30度以上起こし、枕やクッションでサポートすることが大切です。また、利用者の嚥下機能に合わせた食事形態の工夫も必要です。例えば、刻み食やペースト食、とろみをつけた飲み物など、飲み込みやすく誤嚥しにくい食事を提供しましょう。食後はすぐに横にならず、30分程度は上体を起こした状態を維持することで、誤嚥のリスクを減らせます。

• 口腔ケアの重要性

口腔内の細菌が誤嚥性肺炎の原因となるため、口腔ケアは欠かせません。食後と就寝前には、歯磨きやうがいを行い、口腔内を清潔に保ちましょう。入れ歯を使用している場合は、取り外して丁寧に洗浄し、口腔内も清掃します。口が乾燥しないよう、保湿剤やこまめな水分補給も効果的です。口腔ケアを徹底することで、細菌の繁殖を防ぎ、誤嚥による感染リスクを軽減できます。定期的に歯科受診を行い、専門的なケアや指導を受けることで、口腔内の健康を維持しましょう。

◯ 異変を早期に発見し、迅速に対応

• 日常の観察と気づき

誤嚥性肺炎は、早期に異変を発見し、適切に対応することで重症化を防げます。食事中の「むせる」「咳き込む」「食べこぼしが増える」といった症状や、食後の「声がかすれる」「痰が絡む」といった変化は誤嚥のサインです。高齢者では、発熱、倦怠感、食欲低下、夜間の咳といった症状にも注意が必要です。日常の観察を怠らず、小さな異変に気づいたらすぐに看護師やリーダーに報告しましょう。早期の対応が、利用者の健康を守るための重要なポイントです。

• 適切な検査と対応

異変が見られた場合、速やかに医療機関で嚥下機能の検査を受けることが重要です。嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)で、嚥下状態や誤嚥の有無を確認し、適切な対策を立てます。検査結果に基づき、食事形態の見直しや嚥下リハビリを導入しましょう。また、医師や専門職と連携し、適切な治療やケアを実施することが大切です。職員間で情報を共有し、ケアプランに反映させることで、誤嚥性肺炎のリスクを最小限に抑えられます。

◯ 多職種連携で質の高いケアを提供

• チーム全体で予防意識を統一

誤嚥性肺炎の予防には、介護職員、看護師、言語聴覚士(ST)、栄養士、リハビリスタッフなど、多職種が連携することが不可欠です。例えば、食事中の異変に気づいた介護職員が看護師に報告し、看護師が状態を確認、STが嚥下機能の評価やリハビリを提案するといった連携が効果的です。定期的にカンファレンスや勉強会を開催し、情報共有やスキルアップを図りましょう。チーム全員が共通の意識を持ち、協力してケアを提供することで、質の高い誤嚥予防が実現します。

• 安心・安全な環境づくり

利用者が安心して食事や生活を送れる環境づくりも重要です。正しい食事姿勢、適切な食事形態、口腔ケアの徹底、嚥下訓練の実施を通じて、安全に配慮したケアを行いましょう。利用者に対して「ゆっくり食べましょうね」「飲み込みやすい形で提供しますね」と声を掛け、安心感を与えることも大切です。職員同士が支え合い、協力することで、誤嚥性肺炎のリスクを減らし、利用者の健康と笑顔を守ることができます。

総まとめ

誤嚥性肺炎を予防するためには、日常ケアの徹底、異変の早期発見と対応、そして多職種の連携が重要です。正しい姿勢、口腔ケア、嚥下訓練を実践し、利用者一人ひとりに合ったケアを提供しましょう。チーム全員で協力し、安心で安全な環境を作ることで、誤嚥性肺炎を防ぐことができます。

おわりに

最後までお付き合い頂きありがとうございました

いかがだったでしょうか?
スライドの作成もやりやすい形にしてみました。
参考にして頂ければ幸いです。

参考になるかわかりませんが、自分が職場研修で使用したスライドも載せておきます。
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